2008.07.17

高強度コンクリートの遠心成形性に及ぼすペースト・モルタル膜厚の影響に関する研究(AIJ構造系論文集2007)

菅 一雅(ジャパンパイル)・桝田佳寛(宇都宮大学)

■掲載誌:日本建築学会構造系論文集 No.617, pp.9-14
■発行所:日本建築学会
■発行:2007/7


 遠心成形コンクリートの圧縮強度が120N/mm2を超えるような高強度領域になると,コンクリート自体の粘性が増大し,脱水作用やスラッジの発生が抑制されてくる。さらに,調合構成の結合材量が多くなるため,単位ペースト量も増加し,遠心成形による粗骨材分離が顕著となる。既往の研究によると,遠心成形時の骨材分離を抑制することが品質上有効な手段となる。
 筆者らは,遠心成形に用いる高強度コンクリートの調合において単位水量の少ない超硬練り調合が遠心成形時のスラッジ発生抑制や粗骨材分離に有効であり,硬化後の品質も向上することを報告してきた。しかし,単位ペースト量低減による超硬練り調合構成は反面,遠心成形が不良となる条件を有しており,遠心成形可能である調合条件範囲を把握する必要がある。しかし,このような遠心成形性に関する成形可否や粗骨材分離を調合条件から分析した研究は報告されていない。
 コンクリートの調合条件から流動性を評価する方法としては余剰ペースト膜厚や余剰モルタル膜厚(以下ペースト膜厚,モルタル膜厚とする)で評価する研究が多く報告されている。超硬練り調合においても遠心力が作用するとコンクリートが流動するため,同様な手法でペースト膜厚やモルタル膜厚から遠心成形性を評価することが可能であると考えられる。
 本研究は,圧縮強度が120N/mm2を超える高品質な遠心成形性高強度コンクリートを製造できる超硬練り調合条件を検討するため,ペースト膜厚やモルタル膜厚と遠心成形可否や粗骨材分離などの遠心成形性との関係について把握するとともに,遠心成形性で粗骨材分離が抑制できる超硬練り調合設計の指標となる膜厚を用いた評価手法について検討したものである。

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