2009.09.29

既製杭を使用した中柱におけるパイルキャップの耐震性能評価に関する実験(AIJ構造系論文集2009)

岸田慎司(芝浦工業大学)・久保田篤史(大林組)・石川一真(ジャパンパイル)・酒井慎二(芝浦工業大学大学院)・小林恒一(独立行政法人原子力安全基盤機構)・林靜雄(東京工業大学)

■掲載誌:日本建築学会構造系論文集 Vol.74, No.640, pp.1131-1136
■発行所:日本建築学会
■発行:2009/6


 パイルキャップは上部構造の応力を地盤に伝達する重要な接合部材である。特に,地震時には内部に複雑な応力が発生する。しかしながら通常,基礎構造は地震で損傷を生じても,掘削しなければその状況を確認することが難しいことなどから,地震時の挙動は明らかではない。現在,パイルキャップについては,上部構造のように多くの研究が行われておらず,根拠となる実験に乏しく,応力伝達メカニズムなど不明確な点が多い。そのため,パイルキャップの設計は,設計者の判断に委ねられるところが多く,建物が高層化し,上部構造は合理的な損傷評価設計を指向しているにもかかわらず,パイルキャップに対しては,内部の各種補強筋の効果についても考慮されないなど,合理的な評価は行われないまま構造規定に基づいて行われているのが現状である。
 パイルキャップの力学的性能や配筋方法に関する研究は,鉛直支持性能に関するものが多く,田邉ら,鈴木,及び,酒井らの一連の研究がある。いずれも引張力あるいは圧縮力のみを受けたときの性能を調べるもので,地震時性能としては,小林らの研究があるに過ぎないが,パイルキャップの終局強度や変形性状には言及していない。
 筆者らは,単杭を用いた柱,基礎梁,杭,パイルキャップを縮小した部分架構試験体の載荷実験を行い,報告した。本研究は,中柱脚部におけるパイルキャップの地震時挙動をより詳しく報告するものであり,パイルキャップの合理的な設計に必要な基礎データを得ることを目的としている。

Download